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顧客事例

開発者の“知恵と情熱”の結晶。ソリトンシステムズはいかにして Google Kubernetes Engine で次世代認証基盤「OneGate」を創り上げたのか

2025年11月4日
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Google Cloud Japan Team

企業の IT 環境がクラウド中心へと移行し、働き方が多様化する現代。その変化は、ID 管理やセキュリティのあり方にも影響を与えています。長年、認証・アクセス管理の分野で企業を支えてきた株式会社ソリトンシステムズも、この変化の波を真正面から受け止めていました。

「これまでのやり方だけでは、お客様の課題を解決しきれない」 そんな想いから生まれたのが、クラウドネイティブな統合認証基盤サービス「OneGate」です。今回は、その開発をリードしたソリトンシステムズの宮杉氏に、少数精鋭のチームが Google Cloud、特に Google Kubernetes Engine (GKE) と共に歩んだ開発ストーリー、その裏側にあった挑戦と情熱の物語を伺いました。

利用しているサービス:Google Kubernetes Engine, Cloud Load Balancing, Cloud DNS など

「自分たちの手で、新しい“当たり前の安全”を作り出す」開発チームの挑戦

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OneGate 開発プロジェクトは、明確なゴールを掲げてスタートしました。宮杉氏は、その背景をこう語ります。

「このプロジェクトで私たちが目指したのは、まず何よりも『スピード』でした。変化の速い市場だからこそ、いち早くサービスをお客様に届けること。次に、クラウドのメリットを最大限に活かして、賢く『コスト』を抑え、優れたコストパフォーマンスを実現すること。そして、私たちの強みであるセキュリティを軸に、継続的に収益を生む『新しいビジネスモデル』を確立すること。この 3 つを通じて、企業の認証環境をもっとスマートに、もっと安全にしたい。それが私たちの出発点でした。」

なぜ GKE だったのか? 開発者の“集中”を支えた選択

プロジェクト開始にあたり、チームはさまざまなクラウドサービスを比較検討しました。なぜその中で Google Cloud、そして GKE を選んだのでしょうか。

「コストや安定性も重要でしたが、私たちのような少数精鋭のチームにとって、GKE がもたらす開発効率の高さが何よりの魅力でした。 GKE があれば、サーバーの管理といったインフラの面倒な部分を Google に任せることができます。おかげで私たちは、OneGate の価値を高めるアプリケーション開発そのものに、完全に集中することができたのです。これは、限られたリソースで最高の製品を作り上げようとしていた私たちにとって、本当に大きな助けでした。」と宮杉氏は語ります。

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OneGate のアーキテクチャは、まさに GKE が心臓部。認証や ID 管理といった各機能(マイクロサービス)が、GKE という強力なエンジン上で効率よく動いています。そして、Cloud Load Balancing が入り口となってユーザーからのリクエストを受け付け、Cloud DNS がそれを適切な場所に振り分ける。GKE を中心としたシンプルな構成が、開発のスピードと柔軟性を支えているのです。

手探りの挑戦。チームで乗り越えた 3 つの課題

OneGate の開発は、決して平坦な道のりではありませんでした。

「これまでのアプライアンス製品開発の常識が通用しない、まさに手探りの状態からのスタートでした。社内に参考にできる前例も少なく、チームで知恵を出し合いながら、一つひとつ課題を乗り越えていくしかありませんでした」と宮杉氏は当時を振り返ります。

特に、チームの前に立ちはだかったのは 3 つの大きな課題でした。

最初の課題が、「アクセス制御の課題」です。「『社内からは証明書なし、社外からは必須』という、一見すると矛盾した要件がありました。これをどう実現するか、チームでホワイトボードを囲んで何日も議論しました。最終的に、Cloud DNS と GKE 上で稼働する2種類のプロキシを上手く組み合わせるアイデアが生まれたときは、チームみんなで『これだ!』と声を上げたのを覚えています。」

次に乗り越えるべきは、「ハイブリッド連携の課題」でした。多くのお客様が社内で長年利用している既存の認証基盤と、クラウド上の OneGate を安全に連携させる必要がありました。これも前例のない挑戦でしたが、チームは独自の連携フローをゼロから設計・構築。お客様の環境に寄り添う、ソリトンシステムズならではのこだわりが形になった瞬間でした。

最後の課題は、「セキュアなサービスをインターネット公開する必要がある」ということです。従来は社内での利用が前提だった仕組みを、どうやって安全にインターネット上で公開するか。チームは得意技術であるクライアント証明書認証を応用することで、この課題を突破。OneGate の大きな強みが生まれました。

開発スピード 40% 向上!チームの挑戦がもたらした成果

手探りで進んだプロジェクトは、目覚ましい成果を上げました。開発期間は約 40% 短縮、インフラコストは約 30% 削減を達成。この驚異的な数字について、宮杉氏はこう語ります。 「この結果は、チームの努力はもちろんですが、GKE が開発のスピードを劇的に上げてくれたおかげです。インフラを気にせず、次々と新しい機能を試しては改善できる。このサイクルを高速で回せたことが、品質とスピードの両立につながりました。」

ビジネスインパクトも大きく、これまでアプローチが難しかったお客様からも多くの引き合いが来ています。そして何より、開発チームの励みになっているのが、お客様からの声です。 「『管理画面が分かりやすくて、運用が本当に楽になったよ』。お客様から、そんな言葉を直接いただけることが、開発者として一番嬉しい瞬間ですね。」

チームの挑戦は、まだ終わりません。今後は、Vertex AI などのAI技術を活用し、不正アクセスの予兆を検知するような、さらに賢いセキュリティ機能の実現を目指しています。

未来の仲間へのメッセージ

最後に、宮杉氏は未来の仲間へ向けて、こう締めくくりました。「ソリトンシステムズは、『技術が好きで、その本質を追求したい』、そんなエンジニアが集まる場所です。私たちは、ただ言われたものを作るだけじゃない。GKE のようなツールを駆使して、自分たちの知恵と工夫で、世の中にない新しい価値を作り出しています。難しい課題にワクワクしながら、チームで一緒に悩み、一緒に乗り越えていく。もし、そんな環境に魅力を感じるなら、ここは最高の場所です。ぜひ一緒に、未来の『当たり前の安全』を創っていきませんか!」

Soliton OneGate: https://www.soliton.co.jp/lp/onegate/

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ソリトンシステムズ(Soliton Systems)は、1979年に設立された日本(本社:東京、東証プライム上場)の情報通信技術(ICT)企業です。創業時から、組み込みシステムやLAN技術の開発、大規模ネットワーク構築に取り組んできました。現在、同社が最も注力しているのは、インターネットの普及によって深刻化したサイバー攻撃から守る「IT セキュリティ」です。国産メーカーとして、22年連続で国内シェアNo.1の多要素認証ソリューション※(1)や、国内シェアNo.1のRADIUSサーバー※(2)を含む多くの製品・サービスを開発・提供しています。その他にも、映像伝送や遠隔運転・操縦、特殊な組み込みシステムや宇宙用半導体など、独自の技術で開発した製品・サービスを世界中に提供しています。

ソリトンシステムズは、常に最新の技術トレンドに対応し、社会に貢献する企業を目指しています。

・コーポレートサイト:https://www.soliton.co.jp/

※(1)株式会社富士キメラ総研「2004~2025ネットワークセキュリティビジネス調査総覧 デバイス認証ツール」調査結果より
※(2)株式会社富士キメラ総研「2024 コミュニケーション関連マーケティング調査総覧 RADIUSサーバー市場」 調査結果より

インタビュイー
株式会社ソリトンシステムズ
技術本部 本部長 宮杉 知弘

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